有名人は誤解されることでお金をもらっている
私が大学生の頃というのはAKB48の人気がピークの時期と重なる。 まだお金がないのでCDを爆買いするようなのは居なかったが、 普段はアイドルなんか興味がないという顔をしている硬派な奴らでも、 「俺の推しの○○の方が可愛い」等と友達どうしで 言い争いをしていたのを覚えている。
数あるメンバーの中でも、俺たちモテない男たちのハートを 掴んだのが高橋みなみだ。 彼女は徹底して「男性恐怖症」営業をした。
事あるごとに「男の人と目を合わせて話したことがない」だとか 「そもそも人と話すのが苦手」であったり 「休みの日は家の中で過ごすのが好き」といった発言を繰り返した。 他のメンバーも話を合わせて 「一緒に居ても全然喋らない」などとエピソードを重ねた。 世の持てないインドア系男子達に 「なんだ、自分と同じじゃないか」と思わせたのだ。
…のちに、彼女が20歳の誕生日パーティで 業界人を相手にはっちゃけているのを週刊誌にとられ、 男たちは目を覚ましたのだが。
この話を聞いた時、完全に持てない男側だったハタチの俺は 「なんてひどいことをする女なんだ!」と義憤に駆られた。 やっていることは不特定多数に対するロマンス詐欺ではないかと。
だが、年とをって思ったのだ。 逆の立場で考えると、結構辛いことさせられてたんじゃないかと。 普通に考えて、自分が「モテていない」なんて発信したい人間はいないのだ。
例えば自分がとんでもなくモテたとしよう。 街を歩いてればみんな振り返るし、 交差点で信号待ちしてる間にもナンパに話しかけられる。 恋人が途切れたことがない。
だけど、公では全くモテていない振りをしないといけない。 嘘のインドアエピソードを話して、 周りから可哀そうな目で見られないといけない。 メンバーからも、表では、ちょっと下に見られる。 あまつさえ、自分と対極の 人生で一度もモテたことがなさそうな集団から 「一緒だね」と肩を組まれたり、 ぼっちイジリをされるのに耐えないといけない。
その努力と精神的なストレスは、 騙してもらったお金に値するんじゃないだろうか。
この話に限らず、有名人って端的に言って 「誤解されること」によってお金を貰っているのです。
賢いイメージで売っているタレントは 実際には賢くないことがバレると、一気に仕事がなくなる。 だから、もし、本当は賢くないとしても そのイメージに追いつくように、必死に勉強しないといけない。
悪役を演じる役者もそうだ。 本当は性格がいいのかもしれないが、 画面を通してみると、 本当に善意のかけらもない奴に見える、 その誤解に対してお金を貰っている。 逆に、主人公だってそうだ。 本当はそんなにいい奴じゃないかもしれない。 でも、画面上では 誰よりも情に厚く、正義感に溢れる人に見える、 その誤解にお金が払われるのだ。 それが上手ければ上手いほど、ギャランティが上がるのだ。
広告のイメージキャラクターなんかは 誤解仕事の最たるものだ。 本当は対して好きではないかもしれない商品を 自分の顔の横に並べ、 笑顔で「大好きです」と写真を取られ、 それが街中に貼られる。 その代わり、莫大な契約金を貰うことができる。 その金額の大きさは、誤解の度合いの大きさななのだ。
最近、SNSによって有名人自身が 発信できるようになり、 「本当の自分を知ってほしい」といった旨の発言をしてるのを 見るようになってきた。 そういった人を見たら伝えてあげたい。 あなたは誤解されることで世の中からお金をもらっているんですよ、と。
そして、世のモテない男女にも言いたい。 もっと世の中を騙してもいいんですよ、と。